そうだ。そうだ。そうだった。コーカミさんと『核』は切り離せなかったんだった。そうなんだ。そうなんだ。きっとここから愛なんだ。
すっかり、忘れてた。
あの時は、本物の壁があった。総統がいた。そして、壁は崩壊した。
今は、見えない壁があるはずで、議長もいるかもしれないけど。
確かに私たちはそこから出られないでいる。
壁は崩壊するんだろうか。
壁の外には何が待ち受けているんだろうか。
分断の象徴は、私たちの何を断ち切っているんだろうか。
結末を知っている物語は、予定調和でしかないだろうに
優秀なジップロックにやられて、私はほんの少しだけ泣いた。
80年代後半の90年代前半の痛みとかなんちゃらとかにやられた。
あぁ、やっぱりこの戯曲、好きだ。
くそったれなVHSと戯曲しか知らない「天使は瞳を閉じて」は
芝居として、私の中で10年以上<誤解>されたままだった に違いない
芝居をなんにも知らなかった当時の私は、戯曲の言葉が空虚に感じられて
死んでいるとしか思えなかった
秀逸に音声化されなければ伝わらない言語なんて、と一蹴していた
お笑いの台本なんて、絶対に売れない、いや笑えないと思うし
お笑いの台本で笑えちゃったら、なんかもう…なんて言っていいのか…あぁ
完全に良く死んでいた
でも、それは間違いだった。
戯曲は、完全に良く死んでいるかもしれない
でも、常に新たな息を吹き込まれるのを待つ死体だ
眠るゾンビのようだ
いや、そもそもゾンビって寝るのか?
眠ったまま本当に死んでしまうものも五万とあるだろう
いや、むしろ
部品を新調し、電源を入れられるのを待つ人工物
未完成の鉄腕アトム
そりゃ3Dにだってなっちゃう
とにかく
それは私の眼前で本当に生き生きと私に訴えかけ、精一杯私にその真意を伝えようとしてくれた
息を吹き込まれた言葉が、畳みかけるような拍動を響かせる。まさに呼吸をしている
あの時どうしても分からなくて好きになれなかったケイが、愛しくてたまらなくなっていて
あの(かつては写真で)つるつるとしていたマスターが、円熟味を増して相応になっていて
生き返った人たちの誰一人欠けることなく、愚かで愛しい人間だった
どうしようもないジレンマに晒されながら、それでも見守る天使1のあの顔
優秀なジップロック万歳。
来月29になる。
音の付いた言葉を扱い始めた
当たり前のようにしていたことを突然奪われたらと思うようになった
思いを言葉にしなかったら、その思いは、射精されなかった精子のように蛋白質に戻って体内に吸収されていったり、するんだろうか。
痛みすら上手に感じられなくなって、滑稽でもいられなくなって、隠さなくたって平気になって、象徴も飽きちゃったよ
そろそろ進化の時でも来ちゃってるかな。
鴻上さん。ロンドンの夏は、暑いですか。ロンドンの若者は、怒りと絶望の中に希望を見つめていますか。
見えない壁を突き破れそうですか。
改めて、尽きることなく滲み出るその人間への温かな眼差しがやっぱり好きでたまりません。
では。
虚構の劇団 第7回公演「天使は瞳を閉じて」
作・演出:鴻上尚史
出演:大久保綾乃 大杉さほり 小沢道成 小野川晶 杉浦一輝
高橋奈津季 三上陽永 山崎雄介 渡辺芳博 / 大高洋夫
公演日程:2011年8月2日(火)→8月21日(日)
会場:シアターグリーン BIG TREE THEATER
チケット代金:前売・当日ともに4500円(全席指定・税込)